「AI時代に必要な人材(ネオゼネラリスト)の育成に関する調査」は、AI時代に求められる人材(ネオゼネラリスト)について、共通の土台となる能力と、4つの主なフォワード人材(エンジニア、営業、企画、管理部門)に求められる姿勢・態度・能力を把握するとともに、各能力の重要度、存在度・充足度、AI・デジタル化対応状況との関連、および育成・活躍状況と組織パフォーマンスとの関連を明らかにし、今後の人材育成・研修設計の方向性を検討することを目的に実施しました。(2026年10月/株式会社インソース総合研究所)
※本ページはサマリー版を再構成したWeb掲載用要約です。サマリー版はDLしてご参照ください。
調査・研究報告
2026年10月15日
AI時代に必要な人材(ネオゼネラリスト)の育成に関する調査報告
理事・プリンシパル 田渕文美
主任研究員 塚田 聡
研究員 佐伯直高
【目次】
0.調査概要
1.AI時代に必要な「土台7能力」
2.AI時代に必要な人材の能力評価
3.AI時代に必要な人材の創出と組織成果
4.まとめ:本調査から得られた示唆の総括
0.調査概要
<調査概要>
<ネオゼネラリストの特徴>
本調査では、ネオゼネラリスト及び主なフォワード人材について、以下のような考え方と定義をしている。
1.生成AIが専門知識の民主化を促した結果、スペシャリスト思考から、ゼネラリスト志向への回帰を想定
2.昨今の環境変化の中で、企業が真に必要としているのは、単一領域の深い専門性よりも、複数の領域を横断し、異なるリソースを組み合わせて新たな価値を生み出せる人材
3.よって、求められるのは、幅広いスキルを持って構想できる、価値創造のプロデューサーであるネオゼネラリスト
<回答者属性>
1.AI時代に必要な「土台7能力」
AI時代のビジネスパーソンに求められる「土台7能力」について、21項目の重要度(「非常に重要である」「まあ重要である」の合計、以下同様)を見ると、すべての項目で5割以上が「重要である」と回答している。特定の能力だけではなく、構想・対話・判断・挑戦・AI活用・事業推進・知識活用を組み合わせた、幅広い総合力が求められている。
幅広い能力が重要とされる一方、重要度と存在度の差( 「重要である」割合から「存在する」割合を差し引いた値(pt差))を見ると、企業が特に不足を感じている能力が明確になる。差が大きいのは【本質把握力】【構想設計力】【説明力】【価値判断力】【知識転用力】など、“考える・伝える・判断する”系の選択肢に集中している。不足感は、AIツールの操作そのものよりも、課題を捉え、知識を応用し、構想・説明・判断する能力に集中している。
重要度と存在度の差を企業のAI・デジタル化対応「急務群」「非急務群」(※スライドNo.7を参照)別に見ると、育成課題の重点が異なる。非急務群では【構想設計力】【知識転用力】が相対的に不足感が大きく、既存の知識を実行計画や具体的な業務へ落とし込む力が課題となっている。一方、急務群では【本質把握力】【長期的判断力】【価値判断力】【成長挑戦力】【AI判断力】 の不足感が大きい。AI対応が具体化するほど、正解のない状況で課題を見極め、判断し、挑戦する高次の能力が求められる。
2.AI時代に必要な人材の能力評価
AI時代の4職種(※スライドNo.4を参照)に共通する前提として、「主体性」「コミュニケーション姿勢」「越境意志」の3つを設定した。単純集計だけをみると、いずれの職種でも重要度はおおむね5割を超えており、職種を問わず、周囲に働きかけ、信頼を築き、組織や専門の枠を越える姿勢が求められている。
全体では3つの姿勢が幅広く重視されているが、 AI・デジタル化対応「急務群」「非急務群」別に見ると、職種ごとの課題が明確になる。非急務群では、FDA(管理部門)が8.28ポイントで最も大きく、危機感が顕在化する前から、管理部門の主体性が潜在的な課題となっている。急務群では、FDC(企画)が9.07ポイントで最も大きく、AI対応が具体化するほど、企画職には部門や専門の枠を越えて新しい企画・事業を生み出す姿勢が求められる。
4職種に求められる「翻訳力」「信頼構築力」「実行・推進力」「構想・企画力」は、いずれも約5割が重要と回答している。職種間で比較すると、エンジニアはの重要度が4職種中で最も高い。AI時代のエンジニアには、技術開発だけでなく、顧客との信頼構築から課題解決の実行までを担う役割が期待されている。
AI・デジタル化対応「急務群」「非急務群」別に重要度と充足度の差が大きい3項目は以下のとおりで、AI対応が具体化した企業では、管理部門とエンジニアに異なる不足感が表れる。急務群では、FDA(管理部門)が7.82ポイントで最も大きく、次いでFDE(エンジニア)が5.71ポイントとなった。一方、非急務群では、FDA(管理部門)が5.23ポイントとなっている。AI対応の段階にかかわらず管理部門には不足感があり、AI対応が具体化すると、変革を企画する力と、エンジニアが顧客ニーズを技術へ変換する力が新たな課題となる。
職種別のデジタル・AI力の重要度は約5割で大きな差はないが、充足度と比較すると、FDA(管理部門)だけが重要度を下回っている。FDA(管理部門)は、全体で3.7ポイントの不足感があり、非急務群では6.99ポイントまで拡大する。AI対応への危機感が顕在化する前から、管理部門では業務自動化を担う人材が不足している可能性がある。一方、急務群ではFDC(企画)にも4.82ポイントの不足感があり、AI活用を企画や施策検証へつなげる力が課題となっている。
3.AI時代に必要な人材の創出と組織成果
AI時代に必要な人材の育成・活躍状況について、「そう思う(「非常にそう思う」「ある程度そう思う」の合計、以下同様)」との回答をみると(左表)、「継続的に育成されている」の割合が最も高い。 またいずれの選択肢においても、「急務群」「非急務群」間の差は大きく、危機感の強い企業(急務群)では、“人材が育っている・活躍している”という実感を全般的に強く持っていることを示唆している。
組織全体のパフォーマンスについて、「そう思う」との回答をみると、「部門横断的な連携・協働が活発に行われている」の割合が最も高い(下左表)。またいずれの選択肢においても、 「急務群」「非急務群」間の差は大きく、危機感の強い企業(急務群)では、組織的な成果を強く実感している。
4.まとめ:本調査から得られた示唆の総括
AI危機感による重視能力の違い(まとめ1)
危機感の強い企業ほど重要度が高くなる5つの力が確認されました。
(下の図表のオレンジ部分)
① 利害調整力
② 挑戦実行力
③ AI活用力
④ AI判断力
⑤ 倫理的判断力
このことから、AIを操作する技術だけでなく、①利害調整、②まず動く力、③AI活用の限界を見極める判断力、④倫理的判断力が“セットで”重視されていることがわかります。
特に③のAI活用力は、危機感の強い企業において、評価が異なる“二極化”した能力であることが明確になっています。<急務企業63.0%に対し、非急務企業39.1%と、差23.9pt、21項目中最大級の差異>
FDE(エンジニア)の進化:危機感による期待の変化(まとめ2)
エンジニアに強く求められる"ニーズ翻訳力"
AI・デジタル化対応が急務な企業では、FDEの4能力の中でも【翻訳力(ニーズ翻訳力)】が最も重要度を増しています。
これは、急務企業64.8%に対して、非急務企業41.6%と、差異が23.2ptと大きく、4職種16項目中3位という高水準になっています。
また、重要度と充足度の差からみても5.71ptと大きく、現状の不足感の大きさも裏付けられています。
AI時代のエンジニアに求められる役割が“技術力”だけでは説明しきれなくなっていることがわかります。
FDE(エンジニア)の進化:“作る人”から“信頼される人”へ(まとめ2)
相関図(因子分析)から分かること
第1因子「ビジネス実行力」には、価値判断力(.835)や倫理的判断力(.807)といった、“判断軸”に関わる項目が、非常に高い相関で含まれています。
“チャレンジ精神”の3能力の、成長挑戦力(.666)を筆頭に、同じ第1因子に含まれており、 第1因子「ビジネス実行力」 は、判断力や挑戦力を併せ持つ、幅広い能力であることを示しています。
第2因子「コミュニケーション」は基礎知識力の次に、AI活用力(.576)が来ており、AIの基礎となるAI活用力は、デジタル・AI力とは異なるコミュニケーションの因子と強く相関しています。
第3因子「構想力」は独立した因子として、それぞれ高い負荷量で位置づけられています。
今回、ネオゼネラリストの基礎能力と定義しました7つの能力全体が、強い相関構造で結びついていることがわかります。
管理部門におけるフォワードデプロイ型人材(FDA)に不足する能力(まとめ3)
本調査の3大分析領域<姿勢・態度/職種別4能力/デジタル・AI力>全てで、唯一「不足感」を示したのはFDAのみ
本調査で実施した、パートA(姿勢・態度)・パートB(職種別4能力)・パートC(デジタル・AI力)という3つの独立した分析軸全てにおいて、FDAは「不足感(重要度-充足度の差) 」が確認されています。
その中でも、特にFDAの不足感が大きかった項目を抜粋し、他3職種平均と対比したところ、不足感が確認されています。
職種を超えて重要な2つの力(まとめ4)
多くの能力が職種内・総合的にまとまる中、「越境意志」と「翻訳力」は、職種を問わない重要な能力として認識されています。
独立核① 越境意志
4職種共通の同一因子、枠を超える能動的マインド(越境挑戦力)として認識されています。
<解釈> 部署・役割の壁を自ら踏み越えようとする"姿勢"そのものが、どの職種であっても共通して評価される、独立した資質として扱われています。
独立核② 翻訳力
4職種共通の同一因子、専門性をつなぐ変換思考(ニーズ/要件/方針の翻訳)として認識されています。
<解釈> お客様の言葉と専門知識をつなぐ、橋渡しの力です。越境意志とは別に、独立した強みとして評価されています。
人材の育成・活躍度は、組織パフォーマンスの7割を説明する(まとめ5)
「人材育成にしっかり投資していることと、組織全体の業績の間には、強い関連が見られる」ことが、統計的に裏付けられました。
何を、どのように測ったのか
「人材の育成・活躍状況(4つの質問)」と「組織の業績(4つの質問)」を尋ね、両者の関係を統計的に分析しました。(相関分析(Q25・Q26))
その結果、「育成・活躍」に関する4項目は、いずれも「組織の業績」の高さと、はっきりとした関連(プラスの相関)を示し、モデルとしての説明率はR²=.705(7割超)に達しています。(出典:図表101 相関分析(Q25・Q26)及び図表102)
なお、会社の業種・規模の違いを考慮しても、この関係は変わらないことも示されています。
企業における育成・活躍状況(4項目)と、業績との関連の強さに関する内訳は下表のとおりです。
企業において4項目の状況が高い相関で結びついた場合に、業績と7割を超える強い関連となることを示しています。
まとめの概要
総括:調査結果に基づく人材育成施策への提言
≫本サマリー版については、下記よりダウンロードしてください。
【ダウンロード】AI時代に必要な人材(ネオゼネラリスト)の育成に関する調査
※本調査結果を引用いただく際には、「インソース総合研究所」と「調査名」を出所としてご記載ください。
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株式会社 インソース総合研究所
調査研究・コンサルティング部門 理事/プリンシパル 田渕文美、主任研究員 塚田聡
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