令和6年に育児・介護休業法が改正され、一部を除き令和7年4月1日に施行された。介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度等の強化として、介護休業・介護両立支援制度等[1] (以下「制度等」)を取得しやすい雇用環境整備を措置すること、制度等の個別の周知・意向確認および早期の情報提供を行うことが、企業に義務付けられた。
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2025年11月6日
仕事と介護の両立支援~法改正を機に実効性のある取組を
令和6年改正の意図および狙いと、主な改正内容
介護をしている有業者は365万人で[2] 、高齢化の進展とともに要介護(要支援)認定者数は増加[3] 、今後、団塊世代が後期高齢者となることにより、その傾向が続くことが見込まれる。介護者についてみると、企業の中核を担うことも多い50~54歳の9%弱、55~59歳の12%強の雇用労働者が、介護に直面している[4] 。介護は育児と異なり突然直面したり、いつまで続くか見通しを立てにくいこと、介護に係る事情も多様であることから、仕事との両立が難しく、介護離職者も少なくない[5] 。 仕事を辞める理由で最も多いのは「勤務先の問題」で、実際、仕事と介護の両立支援制度に関する個別の周知があれば仕事を続けられたと考える人は多い[6] 。
そこで、今回の法改正では、以下の事項がすべての企業に義務付けられた[7] 。 まず、雇用環境整備の措置として、研修もしくは相談体制の整備(相談窓口設置)、取得事例の収集・提供、取得促進に関する方針の周知のうち、いずれかの措置(可能な限り複数の措置)を講じる必要がある。また、介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、制度等の内容および申出先(例:人事部など)、介護休業給付金などの情報提供を行うことが求められている[8] 。そして、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、制度等を個別に周知し、制度利用の意向確認を行うことが必要である。
改正法への対応~負担の少ない支援ツールの活用
仕事と介護の両立支援の取組は、従業員が介護に直面する前(通常期)の取組と、従業員から介護の相談を受けた後の取組に分かれる。今回の法改正のうち、雇用環境整備の措置と早期の情報提供は前者、個別の周知・意向確認は後者の取組の一部と位置づけられる[9] 。
実際に対応する際には、厚生労働省がまとめた、改正法のポイント解説や様式・資料集が掲載されている「実務的な支援ツール」を活用することができる [10] 。例えば、研修を実施する際に利用可能なセミナー資料や、当事者意識をまだ持っていない社員への意識啓発としても有効なセルフチェックシート、就業継続を支援するために把握・確認すべき項目が整理された面談シートが用意されている。ツールの活用で、負担を減らすだけでなく、改正法のポイントを押さえた取組を進めることができる。
従業員の介護離職を防ぐ成功の鍵
最後に、従業員の介護離職を防ぐ成功の鍵を紹介する。必要に応じて上手に制度等を利用できるよう、まずは制度を正しく理解すること、つぎに、介護は誰もが直面する可能性の高い課題であるとの当事者意識を持ち、制度を利用しやすい職場の雰囲気をつくることが鍵となる。そして、そもそも恒常的に長時間労働となっているような職場では、制度を利用することが躊躇されたり、業務に支障が生じる懸念がある。すべての従業員が「時間制約」があることを前提とした職場環境を整備するため、働き方の見直しを行うことは重要な鍵となる。
働く介護者が増えるなか、介護離職を減らすことは、本人にとってはもちろんのこと、企業にとっても、優秀な従業員の流出防止など、メリットは少なくない。また、社会全体としても、知識や技能の蓄積を通じて競争力強化を実現したり、社会保障費などの社会的コストを削減することにもつながるだろう。
[1] 介護両立支援制度等とは以下をいう。
・介護休暇に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・時間外労働の制限に関する制度
・深夜業の制限に関する制度
・所定労働時間の短縮等の措置
[2] 総務省「令和4年就業構造基本調査」
[3] 厚生労働省「介護保険事業状況報告」
[4] 総務省「令和4年就業構造基本調査」
[5] 直近の令和3~4年の介護離職者数は約 10.6万人で、50~64歳で多い。(総務省「令和4年就業構造基本調査」)
[6] 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(労働者調査)(令和3年度厚生労働省委託調査)
[7] 今回の改正では、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等において、以下の点も改正されている。
・介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みの廃止
・家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加
[8] あわせて、介護保険制度についても知らせることが望ましいとされている。
[9] 仕事と介護の両立支援の取組の全体像は、厚生労働省「「介護支援プラン」策定マニュアル」を参照されたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/001475077.pdf (参照 2025-10-15)
[10] 令和6年改正への対応については、厚生労働省「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」を参照されたい。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001521425.pdf (参照 2025-10-15)