少子高齢化が進行する中、企業における持続的な成長と人材確保の観点から、シニア人材の活用がますます重要と言われており、2025年4月からは、改正高年齢者雇用安定法も施行される中で、企業は継続雇用の延長は、就業確保措置を講じているものと想定されます。しかし一方では、その運用や実態においては課題が多いという意見も聞かれます。
そこで、インソースグループでは、「シニア人材の活用促進に関する調査」を実施することとし、本報告書では先行して実施したシニア個人向け(第一部)、人事担当者向け(第二部)アンケートの結果から、相互間のギャップの存在を分析しました(第三部)。これら一連の調査は、今後のシニアの人材戦略や制度設計に資することを目的としています。
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2025年11月26日
シニア人材の活用促進に関する調査報告<シニア個人と人事担当者のギャップ分析編>
目次
0.調査概要、調査の特徴
1.5つの課題領域におけるシニア個人と人事担当者のギャップ分析
2.ポジションカテゴリ別のシニア個人と人事担当者の認識の違いとギャップの分析
0.調査概要、調査の特徴
■調査概要:シニア個人(アンケート)編
■調査概要:人事担当者(アンケート)編
■今回の調査の特徴
〇今回の調査において、「シニア個人(アンケート)編」では、企業に勤める50歳以上のシニアの方々について、年齢・年代ではなく、 下記のような企業における現在のポジションカテゴリ(計7種)をベースに設計した。シニア待遇となってく過程で、意識変化やモチベーション維持等がどのように影響しているか、マインド面の視点からのカテゴリ分けである。
〇「人事担当者編」の調査においても、これらのポジションを意識した質問を行っている。例えば、人事担当者が認識しているシニアの課題の状況について( Q11~Q16 )は、下記のポジションカテゴリ(②~⑦)別に確認した。(なお、「人事担当者編」は、定年制度がある企業を対象にしているため、下記①のカテゴリの該当は無い。)
1.5つの課題領域におけるシニア個人と人事担当者のギャップ分析
【課題領域1】マインド面(モチベーション・パフォーマンス)
■マインド面における課題および解決策
〇シニア個人が、マインド面の課題の筆頭にあげた「同年代成功事例不足」について(図表1)、人事担当者も課題の筆頭にあげており(図表1)、両者がこれほど明確に一致している課題は、優先順位が高いと考えられる。
〇一方で、マインド面の課題解決策の選択肢において、シニア個人と人事担当者のギャップは大きい。これはシニア個人が、まずは「評価を見える化」して、「期待役割を明示」してほしいという短期的で分かりやすい要求をしていることに対して、人事担当者では、その先の抜本的な施策「人事評価基準」の策定を目指している故のギャップと推定できる。
〇人事担当者においては、まずは、短期的には、シニア個人の望んでいる「評価を見える」ようにして、「期待役割を明示」を行うことが、即効性のある解決策としては有効である。その上で中長期的に、「シニア向け人事評価基準の策定(多元的評価制度の導入等)」を行うことが望ましい
【課題領域2】知識・スキル・経験の活用面
■知識・スキル・経験の活用面における課題および解決策
〇シニア個人が、知識・スキル等の活用面で挙げたトップ課題は「スキル棚卸の仕組み不足」「継承の仕組み不足」だが、人事担当者の課題認識は高くない(図表3)。
〇一方で、知識・スキル等の活用面の施策としては、むしろ人事担当者側で、「棚卸ワークショップ」や「スキルマップや社内データベースのマッチング」がトップになっている反面、シニア側の関心は低くなっている(図表4)。
〇しかし、解決策においては、人事担当者側が最も支持する解決策として「スキル棚卸しワークショップ」や「スキルマップ導入と社内マッチングシステム」を選択していることから、ここにギャップはなく、これらの施策を最優先させることが効果的だと推定される。
【課題領域3】新スキル習得面
■新スキル習得面における課題および解決策
〇新スキル習得面での最大の課題は、特にシニア個人にとって「何を学ぶべきかわからない」ことである(図表5) 。それが、シニア個人の「学習意欲不足」、「支援制度不足」の課題につながっている。そのため、「必要スキルの整備・明示」が、シニア個人と人事担当者の双方で最も支持される解決策になっており(図表6) 、この領域でまず着手すべき施策である。
〇ここは、まず人事主導で進められる必要があるが、「必要スキルの整備・明示」するために、必要なスキル(専門スキル、技術スキル、ヒューマンスキル等)をガイドライン化し、ジョブディスクリプション(職務記述書)等で文書化・明確化することが望まれる。それが明確になれば、「リスキリング研修の体系整備」や「受講機会の拡大」などの施策にも広く展開が可能になる。なお、スキル習得面においても、ロールモデルがあれば、学びがスムーズになるという期待が高い。
【課題領域4】コミュニケーション・人間関係
■コミュニケーションや人間関係における課題および解決策
〇シニア個人が、人間関係面で2番目にあげた課題は「マインドチェンジの困難さ」であり、人事担当者の課題認識もトップになっている(図表7) 。
〇その施策として、人事担当者側では、「ダイバーシティ研修」や「マインドチェンジ研修」の受講をトップにあげているところ、シニア個人は、これらに対しては最下位の評価で、ギャップが著しくなっている(図表8) 。
〇ただ、人間関係の課題面では、シニアと周辺・会社の認識ギャップが大きいことが推測され、またマインドチェンジ研修はシニアにとって、向かい合いたくない内容の印象が強いであろうことから、人事担当者側の判断を優先させ、まずは「ダイバーシティ研修」受講を(シニアだけでなく広い社員を対象に)必須化するなどの短期的施策の検討も有効であると思われる。なお、「マインドチェンジ研修」では、人事担当者におかれては、シニア個人の事情の考慮や、会社が意図する研修内容になっているか等の再確認・見直しを行う必要もある。
【課題領域5】IT・業務インフラへの適応
■IT・業務インフラへの適応における課題および解決策
〇IT・業務インフラへの適応面の解決策についても、シニア個人と人事担当者のギャップが大きいが、「シニア向け少人数研修」は、双方が共通の解決策として期待している(図表10) 。そのため、まず取り組むべき解決策として、研修が「少人数でゆっくりペース」か、習熟度別の編成になっているか、質問しやすい環境かなどの視点を取り入れることが望ましい。
〇「シニア向け少人数研修」以外は、双方のギャップが大きいため、人事担当者が施策を立てる際(特に、逆メンタリング、サポート体制等)には、シニア個人の心理的負担や、身体的負担に配慮しながら進める必要がある。マニュアル作成の際にも、文字サイズやワード選択等にも配慮が必要である。
2.ポジションカテゴリ別のシニア個人と人事担当者の認識の違いとギャップの分析
ポジションカテゴリ別のシニア個人と人事担当者の認識の違いとギャップの分析
〇シニアの7種のポジションカテゴリ別に、各カテゴリのシニアにおける特徴的な傾向と、人事担当者の課題認識に存在する違い、それぞれのギャップの特徴ならびに、そこから示唆される点は以下の通りである。
≫本サマリー版については、下記よりダウンロードしてください。
【ダウンロード】シニア人材の活用促進に関する調査報告<シニア個人と人事担当者のギャップ分析編>
※本調査結果を引用いただく際には、「インソース総合研究所」と「調査名」を出所としてご記載ください。
■本報告書に関するお問合せ
株式会社 インソース総合研究所
調査研究・コンサルティング部門 理事/プリンシパル 田渕文美
email : [email protected] / web: https://www.insource-ri.co.jp
■本調査の詳細版に関するお問合せ
本報告書の詳細版をご希望の方は、インソースの営業担当者もしくは下記までお問合せください。
問合せ先: [email protected]