研究員コラム

2026年9月1日

不登校離職を防ぐ職場づくりは急務
~不登校の子どもを持つ従業員がいる確率は100人規模の企業で7割~

調査研究・コンサルティング部門
主任研究員 塚田 聡

不登校の問題は企業にとっても無関係ではない

不登校について、「ニュースでは聞くが、自分のまわりではあまり聞かない」「本当にそんなにいるのか」と感じる人もいるかもしれない。一方で、現役の子育て世代からは、「子どものクラスに何人かいる」「知人の家庭でも悩んでいる」という声も珍しくない。
では、企業の中ではどう見えるのだろうか。

100人規模の企業では約7割の確率で存在

規模感を把握するため、不登校児1人につき保護者が2人いるという単純化した仮定を置くと、不登校児童生徒数353,970人[1] に対し、該当する保護者は機械的に707,940人と算出される。次に、小中学生の保護者層を便宜的に35〜54歳と置く。35〜54歳の役員を除く雇用者数2,515万人[2] に占める、不登校の子どもを持つ従業員の割合は約2.8%となる。
2.8%と聞くと、低く感じるかもしれない。しかし、企業という集団で見ると印象は変わる。役員を除く雇用者全体5,828万人に占める35~54歳の割合43.2%で試算すると、不登校の子どもを持つ従業員が少なくとも1人いる確率は、30人規模で30.9%、50人規模で46.0%、100人規模で70.8%、300人規模で97.5%、500人規模で99.8%となる[3]
企業全体で見ると、不登校は決して遠い問題ではないことが分かる。

離職につながる可能性もある

もちろん、不登校の子どもを持つ従業員のすべてが離職するわけではない。しかし、子どもが日中家にいる、学校との連絡や面談が増える、朝にならないと登校できるか分からないといった状況が続けば、働き方への影響は避けられない。
出社時間の調整や急な休暇取得、在宅勤務の活用などで仕事を続けられる場合もあるが、制度や職場の理解が追いつかなければ、離職という選択肢が現実味を帯びることもある。

相談しやすい環境づくりが企業価値を守る

企業が見落としてはならないのは、「相談がない」ことを「困っている人がいない」と受け止めてしまう危うさである。子どもの不登校は職場で話しにくく、周囲への遠慮や評価への不安から相談をためらう人も少なくない。
また、不登校離職は企業にとっても無視できない課題である。弊社の試算では、保護者の離職による経済損失額は年間約4,972億円に上る。一方で、人事への相談が広がり、相談者と同程度まで離職率が抑制できた場合、損失額は約1,701億円縮小する可能性がある[4]
だからこそ、企業には、本人が相談しやすい環境を整えることが求められる。相談しやすい環境づくりは、不登校の子どもを持つ従業員を支えるだけでなく、人材流出を防ぎ、企業価値を守る取り組みでもある。

[1] 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
[2] 総務省統計局「労働力調査」(2025年)
[3] 1−(1−2.8%)の対象層人数乗で計算
[4]「不登校児童生徒の保護者の離職による経済損失額は4,972億円と推計」IRI提言レポート(2026年7月29日)